高いものはいい。
安いもので、質にこだわるとやけどする。
「安かろう悪かろう」という言葉がある。
安かろう悪かろう(やすかろうわるかろう) とは? 意味・読み方・使い方
値段が安ければそれだけ質が落ちるであろう。安い物によい物はない。
[補説]「悪かろう安かろう」とは言わない。
ビジネス的には安かろう悪かろうには、ちょっと色々と背景がある。けれどここでは割愛する。企業努力として安くても、イイものを作るとがんばっておられる企業には頭が上がりません。
どうしても、昨今、この質とお値段のバランスが、ちょうど良い塩梅の商品にめぐりあわない。
こういうとき、ちょっとした贈りものをする際には、なやましい。
たとえば誕生日の贈りものは、やっぱりちょっとしたものを贈りたいし、お値段と品質のバランス的に、あなたのことを想って選びました、と言ってから渡したい。
いつも誰かに贈りものをするときには、頭を抱えてしまうのだ。あたしは。
ああ、もう。誰か、かわりに選んでよー!といつもひざから崩れ落ちている。
受け取った相手が微妙な顔をしてしまったら?「ちょっと思ってたのと違うなあ」、「これ欲しいやつじゃないなあ」、「え、誰このおっさんキモ」
そんな顔をさせてしまったのが、自分のせいだったなら、平静を装える気がしない。「ああっ、スー。」と、か細い声をのこしその場から全速力で逃げだすだろう。そうなればもう、その人とはしばらく会えない。会いたくない。
そもそも、相手が何を求めているか。あらかじめ聞いてしまえばいいのに、スマートにかっこつけて「好きなの、これでしょ?」とサプライズしたがる。贈りもの弱者が何を言ってんだと総ツッコミを受けそうだが、男とはそんなもんである。基本アホだ。
サプライズではないにしても、あまり話さない相手や、会うことの少ない相手に対して、感謝の意を贈りものに宿したいときだってある。そんなときにはやっぱり、ちょうど頃合いの品がねえええ!とひざから崩れ落ちるのだ。
ここでお値段の話に戻るが、あまりにお高い商品だと、逆に贈りものとして適さないケースもあるのだ。
安かろう悪かろうなら、高けえものを贈っておけば万事OKでしょう、とはならない。高すぎるとちょっと相手が引いてしまったりもする。「え、そんな関係でしたっけ、ぼくら?」となったりすることもある。
また、贈りものというのは一度し始めると、お返しがくる。お返しなんかいらない。と思うのに、そういうものなのだそうだ。え、本当に見返りを期待なんかしてないからいらない。と思うのだが。
あまりに高すぎるものだと、お返しする側が大変だ。逆にどんなものを返せばよいか、なやませてしまう。そこのところも考えつつ、選ばなきゃいけないのだ。もうむずかしすぎるってえええ!
過日、うちの奥さんから誕生日の贈りものをもらった。
加齢にともなう体臭を気にしていたあたしに、ちょっと試してみたら?と渡してくれた。あと保湿足りなすぎると。
近所のドラッグストアで買えるのだが、ちょっとお高めで、でもがんばれば手が出ないお値段じゃなくて、でもテスターとか試供品とかないので、試そうにも断念しがちなやつー!
うお、これこれー!これ、うれしいー!
と、受け取った。
奥さんいわく。
「高いものはイイものってわかってるんだけど、自分で買っちゃうと高いなあって思って使い渋ったりするからね。だから、ふだん使いのものよりちょっとお高めのこういう日用品って、人からタダでもらえるんだったら使ってみたくなるし、贈りものにちょうど良いよね」
いや、もう、それだよ。
目から耳からうろこがバリバリ落ちてきた。
たしかにお試しで、「こんなのあったから使ってみたら?」と贈られるのって、別に高すぎなくても想いはじゅうぶんに伝えられる。
奥さんは、あたしが体臭を気にしていたことを覚えていたし、保湿もせんと肌ガッサガサやな、とあたしのことを見ていた。この、「見ていた」がすごくだいじな気がする。贈る相手へ思いを伝える一番の手段ってこの、贈る相手のことをきちんと考えることが大事だ。
そうして選ばれたものなら、それは自ずと、あなたのことを想って選びました。を暗に表現することができる。
どこで買ったか。なんて聞く必要ない。どれくらいのお値段だったか、なんか確認しなくてもよい。受け取る側にもやさしい、お返しをなやまないで済む。
奥さんはいつもそうやってプレゼントを選んでいるらしい。「もう買ってたわ。とか、割と、ハズすこともあるんだけどね」と、あたまをかいたが、ほんとおみそれしました。具合が絶妙だ。センスがいい。プレゼント選びの伝道師。
なるほど、よくわかった。
いきなり買って使うのはハードル高いなあ。と渋ってしまう品物を、「ちょっと試してみたら?」「タダ同然でもらったものなら使いやすいよね?ハードル下がるよね?」と選んでみるといい。相手が欲しがっている品物であるとポイントが高い。それには相手のことをよく「見る」ことが必要不可欠だ。
つまりこういうことだな。
よし。じゃあ、誰かあたしのかわりに選んでください!誰にとっても絶妙な具合になる魔法の贈りものを!〈了〉