え、ちょ、割らない方が88.5円も安いじゃないですか!!?
仮説でほとんど答えが出てしまったところで、前回は幕を閉じたのでした。
さて、今回は、実際の実験&検証フェイズなんですけど、もう答えは出ているのでは?という疑問はいったん大気圏の外へ吹っ飛ばしてもらって、ご覧いただきたい。
ではどうぞ。
カルピスおじさんの少年時代
カルピスを経済的にがぶ飲みしたいおじさんにも、少年だったころがありました。
あれはそう。たぶんきっと、世の中が平成という元号に浮かれていた頃。
バブルの熱狂がおじさんの住む田舎町にも波及して、近所の住宅街にもスナックや夜のお店が立ち並び、喧騒から離れてきらびやかな女性が腰をくねらせながら家路を急ぐそんな夏の夜――。
夜中も流れ続けるテレビ番組をビール片手に見るだるだるの白下着姿の親父にばれないよう抜け出し、ぼろアパートに近い自動販売機へ飛びついた。
当時はまだコカ・コーラ一本100円で買え、自販機によっては100円玉を投じたらお釣りが戻ってくるものも。
パジャマ姿のあたしはパンツの金玉ポケットにねじ込んだ100円玉を握りしめ、財宝を狙い禁断の石扉を開く、まるで盗賊団の若頭のような面持ちで自販機の前に立った。ぐっと投入口に硬貨を滑らせ、点灯したボタンを連打。
がこんと響きわたる音にさえ、身をこわばらせながら、部屋の窓から見えない位置に移動し、プルタブをあけた。そしてのどに流し込んだ炭酸のなんと甘露なことか。大人の階段をのぼったかのようにあたしの小さな反抗は大冒険へと変わった。
次の日、また具合が悪くなり幼稚園を休んだあたしのもとへ、近所の友達が見舞いにきた。いつもの持病なので、決して昨夜の小脱走が原因ではなかったのだが、母親に対して後ろめたさみたいなものがふつふつとあった。
そんな息子の心中を知ってか知らずか、来てくれた友達へ麦茶とカントリーマアムを振る舞ってくれた。
我が家では次男が生まれたばかり。家に甘味料全開の飲み物はほとんど置いていなかった。そもそも長男のあたしが、乳製品にアレルギーがあったため、カルピスなんてあこがれに等しかった。
これが友達の家へ遊びにいくと出てくるわけだ。
夏と言えばカルピスをグラスに注ぎ、氷がたっぷりと泳ぎ、風鈴とともにからんと鳴る。
それだけで日本の夏だ。ああ、今年も夏がやってきた。と風情を感じたものだが、我が家にそんな風習はなかった。そんなものはテレビのコマーシャルで見かける幻想みたいなものだった。
友達の来訪で、その家庭ルールが緩むかなと期待したものの、母としては「人さまのお子さんにもアレルギーがあってはいけない」と最大公約数的な意見を採用し、家にその手のものは置いていないようだった。どうもママ友ネットワークでもそんなことを共有していたようだ。
そんな外堀が埋められているなんて露知らず、友達はお菓子には納得を示したものの、飲み物には渋い顔を隠せなかった。それを見た母は一瞬考えたあと、台所へと引っ込んだ。
いいぞ。何も知らないことの方が山を動かす手数になる!いけいけ、こちとら病気の事情を良く分かっていない友達を演じきってくれ!このままいけば、母は折れてカルピスを注いでくるぞ!
我が家にカルピスの「カ」の字もないことを知らぬ少年時代のカルピスおじさんは、おろかにも友達を利用し、自分も文字通り甘い汁をすすろうと口の端を歪ませた。
そして戸が開き母が戻ってくると、その手には昨夜捨てたはずの空き缶が握られていた。
「な、なぜ……ッ!」
あたしは目の前が真っ暗になり、急に老け込んだ声を上げ、母を見た。
あんたのしでかしそうなことはお見通しよお!とでも言いたげに勝ち誇った顔でいた。
どうやら昨夜、きらびやかな女性が腰をくねらせて家路を急いでいたら、見たことのある児童が何かを小脇に抱えて横切ったそうな。様子を見ていると、木陰で隠れて缶ジュースを飲み干し、藪の中へ転がした。その子は、物音を立てぬよう走り、良く知る部屋へと吸い込まれていった。
きらびやかな女性は、それで合点がいった。その子の親は自分の良く知る人物だと。そして、自分の子にうちの母宛てのお手紙を持たせ、あたしのお見舞いに行くよう促した、と。
あたしは膝から崩れ落ち、友達は、昨夜あたしが飲み干したものとまったく同じものを嬉しそうに口にしていた。
ああ、カルピス。魅惑の甘さ。
検証
大人になった今、あたしも自由に楽しく美味しくカルピスを頂けるようになりました。
あれほどまでに渇望した甘ぇ飲み物は、自分の体と折り合いをつけて、健康的に(?)嗜んでいます。
少年時代ではできなかったこの検証も、大人になった今だからできることと、嬉々として取り組みました。
(奥さんへ言い訳する男の図:いやほんとブログだから!ブログのためだから!)
有り体に包み隠さず、検証の末、分かったことを述べます。
仮説で提示した、割るための強炭酸水500mlを、カルピス原液を飲み干す前に4本開けました。
結果的にはコップ17杯強ぶんは楽しめたわけです。
150ml×17杯で=2,550mlつまり500mlペットボトルの5本分ということになります。
下記の前提を代入すると、
カルピスソーダ500mlペットボトル一本の価格:85円
カルピス原液470mlの価格:268円
割るための強炭酸水500ml:58円
85円×5本=425円がカルピスソーダを500mlペットボトルで買った場合。
268円+(58円×4本)=500円。これが割るだけ飲料を買った場合にかかるコスト。
さて比べてみますと一目瞭然、割らないほうがやはり75円も安いという結果に。
研究結果
自由研究と銘打っておきながら、何もぺりグ的には特別なことをしたわけではありません。
こんな検証記事、いつものぺりグでやっていることと何も変わらりませんでしたね。
何か疑問を抱いて、仮説を組んで、検証してみる。それは、ゲームを楽しんでいるあたしがいつもやっていることと何ら変わりありませんでした。
そんなもんだと。
自由研究って、そんなもんでいいんだ、と思っていただけたのなら、それでいいです。
今回の検証も、おっさんの忸怩たる甘ぇ飲み物への思い出があったものの、実際の研究内容は本当に3行程度で十分な結果が生み出せたと思っています。
結局まとめると、3行で良かったわけですから。
ね。このスカスカの模造紙ご覧くださいよ。
これだけです。
これでいいんですよ自由研究って。
では最後に、あたしがこの結果を受けて、これからこの研究が何に生かせるかなあと考えた結果をお話します。
研究結果を受けての感想
今回、経済的に飲料を購入するという面では、一本売りの方に軍配が上がった結果となりました。(ちなみに、もちろんこの「経済的に」という結果は、店舗や社会情勢、物価の状況において刻一刻と変化、歪みが生じます。それを念頭にお聞きください)
ただ、安く手に入るからと言って、経済的か?というと、それもちょっと幅がある気がします。
たとえば、前回のテーマ決めの時に挙げたように、ペットボトルをひとたび開封すると、数時間で飲み切らないと炭酸が抜けたり、雑菌が繁殖したりして、結果飲み残してしまうという事態を招きかねません。
そうなってくると、飲料ロスと言う観点で、果たして一本売りの方が安上がりなのか?というとそうではない気もします。
割るだけ飲料の方では、強炭酸水の炭酸抜けというのは時間が経つにつれ、多少はあり得ますが、ボトルの口に直接口をつけずに済むなど、長く安心して楽しめる飲み方が実現できました。
カルピスソーダをコップ1杯分毎日注いでも、割といつでも美味しく飲むことができました。
これは一本売りの方ではちょっと実現できない飲み方でした。実際に一本売りで同量を楽しむとなると、当然ちょっとずつ楽しむことはできないし、毎日500mlペットをぐびぐびと飲み干すなんて、糖尿病まっしぐらです。年老いた母からも、奥さんからも、羽交い絞めにされてしまいます。
みなさんにとっては、この結果からわかる事実は、どちらに受け止めることができたでしょうか?
あたしにとっては、若いころならいざ知らず、現年齢で甘ぇ飲み物を気兼ねせず飲みたいのなら、500mlペットを買うのは危険行為だ!と自制せざるを得ない結果となりました。
ちょっとだけかかるコストが多くても、日々のランニングコストは割るだけ飲料の方が圧倒的に割安です。おじさんの健康面を鑑みても、毎日ちょっとずつぜいたくしましょうか。という方が、リスクを分散しやすくなります。
だからあたしは、この自由研究で生み出せた結果には反して、より経済的にたらふく甘ぇ飲み物を楽しみたいときは、割るだけ飲料の方を選択しようぜ!を自己の感想としてこの研究を結びたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。
【了】
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