ぺりグ

数えたら今年で6年

エンドレスぱふぱふエイトⅦ

 

 

 

何かがおかしい。

そう気づき始めたのは、地表を釜ゆでの刑に処したんじゃないか、と疑いたくなるほどの気温に日本全土がうんざりとしていたお盆前のある日。

夏休みも後半戦にさしかかろうとする8月初旬。花火シーズンまっただ中。ソファにたいそう深くもたれ掛かっていると、何故だかわからないが部屋の隅に妙な人影が現れそうな予感に身震いしながら、あたしはスマホを睨みつけていた。

我が最底辺の視力が、地表を突破しマントルに届きそうなほど急潜行したわけでもない。妙な既視感に襲われつつも、お決まりのセリフのように耳なじむ文字の列を呟いた。

「あぶない水着2024か。やってきたな、今年も、夏が」

 

 

夏の訪れを告げると共に、一通のお知らせが届く。

「今年のこぼれ落ちそうな灼熱果実は、セラフィのたゆんたゆんです」

なるほどな。健康的な素肌が白日の下にさらされ、その絹のように透き通るなめらかな弾力は、今にもわずかな布地から飛び出していきそうだ。

セラフィってこんなにバスト、たゆんたゆんだったんだ。好き。

 

 

NPCも絵知恵地で困る。何このお腹のエロさ。性欲を持て余す

スマホを睨みつけて、小一時間が経過しようとしていた。ふう。小休止でも挟もうか。

スマホから目を離す前に、他のお知らせに目を通してからにしよう。そう思い至り、空へ投げ出す目線を再び画面に戻したのがいけなかった。

 

 

アッ!

ふっ、復刻……ッ!!

 

 

 

あっ、ちょ!

アッッッッ、ちょッッッッ!

セクシー!

しぇ、しぇクシービーム!!

まだ、取れてない……取れてないぞォォォォォォ!

ウォォォォォォォォーーーッ!(カチャッカチャッカチャッ)←有償ジェムを込める音

ドウンッ!ドウンッ!ドウンッ!←液晶パネルを壊す勢いでタップする音

おたからスライムたちが魔方陣に駆け込んでくる……ッ!

アアアーーーッ!引いちゃったーーーッ!

 

 

テッテレー

取れてない水着がきちゃったーーーッ!(取れてなかった、よ……な?)

って、え!?マジ!?

ぃやっタァァァァァァァァァう!!!

ぱふぱふ水着だァァァァァァァーーー!

 

ご存じの方はご存じの通り。防具にもスキル習得のできるものが存在し、この絵同様、21年水着は「ぱふぱふ」が習得可能スキルとしてくっついていた!

しかしそれは辛くもガチャ運のなさから、あたしの手のひらをするりとこぼれ落ち、錬成オーシャンウィップでしかお目にかかれていなかったのだ……!

 

 

こうして戦闘中にぱふぱふを堪能しようにも、オーシャンウィップを担いでいないとできない始末。

 

 

さらに、一本しかないオーシャンウィップを全員ぶん持たせる必要がなく、

 

 

いつだって思い立った時に……!

 

 

1戦闘で最大2人まで、ぱふぱふを味わえることになる!

 

 

なんて感動!天にも昇る快感とはこのこと……ッ!いつも衝動的に引き金をひいてしまう質なのだが、今回ばかりはそれでよかった!これでよかったのだ!脳髄をアドレナリンが駆けずり回るッ!あふうーん。

 

 

 

見よ、このぱふぱふバリエーション!

 

 

どうだい!?

うちの子たち、いい娘が揃っているだろう!?

よそに出しても恥ずかしくないよう手塩にかけて育てた子たちだ!まま、今宵は一献。辛めのやつをぐいと飲みながら、分裂したふくよかな月でも眺めましょうや。(乱視)

 

 

つんと胸を突き出して、あたしの大事な部分へ押し当ててくるのは'21水着で一向に構わないのだけれど、こうして次から次へとぱふぱふモーションを眺めたくなったときには、オーシャンウィップのように武器に当該スキルがついていると、いろんな服装で試せるのが捨てがたい。

魅了絡みの単体ヒャドじゅもんしかないので、実用性はいづれにせよ低いのだが、思いがけない10連ツモにあたしの頬は緩みっぱなし。いやあ、今年の夏は早くも良い思いをさせてもらったものだ。

 

 

 

 

夏で、夏休みだった。

ぱふぱふのおかげで、お盆は心穏やかに過ごすことが出来た。

とはいえ、家の中に引きこもりきりとはいかず、心なしか、守り人のぺりめにもこんがり日焼けしているように見える。

そして気がつけば夏の全国高校野球大会、甲子園は大会第11日目。暑い日差しを背に、ゆで釜で白球を追いかける高校生たちに目頭を熱くさせていた頃、8月17日。

ドラクエウォークではサマージェムくじ第2弾の結果が発表になっていたが、当然こんなものあたるわけもなく。スマホをソファにたたきつけたくなる気持ちを堪え、腹いせに水着復刻ガチャを回すことにした。

ゼシカがメインで登場したあぶない水着'23装備シリーズ。

このふくよかすぎて走るとたゆんたゆんと形を歪ませるご立派様をお持ちのゼシカ。彼女のセクシー伝説は枚挙に暇がない。年端もいかぬ少女にはあるまじき、「おいろけ」なんていうスキルを身につけ、可愛くもダイナミックな色気を振りまく。これが本編中に登場するというのだから、世の小学生たちは何を思って彼女を眺めていたのだろうか?どうせパンツを覗こうとしたり、不必要に走らせてご立派様をバインバイン揺らすことに終始していたのだろう。何を隠そうあたしがそうだ

彼女の魅力を語り出すと停まらなくなるほどの魅力を兼ね備え、シリーズ通しても彼女を超える好きキャラは出てきていないと豪語するほどのぺりめにが、そんなゼシカメインの水着ガチャを引きまくっていないわけがない。

2023の夏、何度も課金したくなる手を堪え、自制しきってパレオだけ引いた自分を、中途半端の生殺しと恥じた。4.5周年後半で一度復刻した同装備に、今度こそとツッコんだ末、水着上×1のみ。もうここが3度目の正直なのだ。もう股間は待ってはくれない。ここで引けなきゃ股間がすたる。おおおおおおおおッイクぞァァァァッ!

ハァァァァッァ!

アァーッイ!

 

 

だああああああああああああああああああ!

万年金欠のぺりめに。

物欲に勝てず、いつも石を貯めきれずに使っちまう俗物。

オオオオオオオオオオ……。

と声にもならない声を出し、空っぽになったジェムを穴が空くほど見つめる。この一連の流れをもう何度も繰り返した気がする。強烈な既視感を覚える。

そうだ。

今の今まで、忘れていた。

何かがおかしいと感じていたのはこれだったのだ。

ガチャ終了は8月29日か。まだ2週間くらい残っている。しまった。そろそろどろりと溶ける未来人がやってくる日ではないか。ぺりグを確認する。

 

 

よし、9月23日の記事はこれまでと同じように見ることができる。

『まったく、やっと気が付いたか』

お出ましか。振り返ると、部屋の隅に、腐りきった死体が立っていた。

『説明をしている暇はないが、あたしは9月のおまえだ』

わかっている。と、ずかずか部屋を横断し、死体に手を伸ばした。頭を掴んだ。と思った矢先、感触なくどろりと溶けて消えた。

なるほどな。やはり実体を持たなかったか。

9月のあたしと騙って目の前に現れたぺりめには、未来から時間跳躍でやってきた存在ではなかったというわけだ。

また、触ろうとすると感触が得られなかったことから、何らかの条件で目の前に現れるようにプログラムされた無形物の線が濃い。もしくは、そう認識するようにセッティングされたもの、というか。プログラム?セッティング?いったい誰が?その謎を解くために一度状況を整理したい。

 

さて先ず以て、何度めのループで、何回このことに気づき、何度このような思考をしたのか?それは定かではないが、8月17日時点でここまでのことに気づき、この気づいたタイミングはまだ手遅れでなかったものと思いたい。

これまでのすべてのループ回の記憶は共有できないが、ループしているのは8月上旬にあぶない水着イベントへ着手し始めたときから、8月29日の15時まで。

記憶の統合はあたしが超人類でもなければ無理だ。そんなことは進化前の猿でもわかる。

ループ回数を観測できる存在も、今時点の自分では発見できないので、もうどれほどの回数、ループから抜け出すための試行を重ねているのかもわからないし、そのバリエーションも不明。総当たり的に「これはやってないから、次はこれをやる」という潰し方はできないこともわかっている。

これらはすべて、記憶の残滓ともいえる、脳内にこびりついた垢のようなものから情報を整理しているに過ぎない。この記憶の残滓が正しいとも間違っているとも限らないし、正誤を確かめる術もない。

以上のことを前提に、今後の行動方針を検討するべきだと、今時点の自分は判断した。

というかいくら考えたところで、対応策なんて、それくらいしかない。

さて、ここまで思考を進めると、ある一つの可能性が浮上する。

カギ、と断定できるかはわからないが、これが起点となってループが起きているだろうことは、可能性というかもうこれしかないだろうと言える事象。

このイベントを、眉間にしわ寄せて着手したために、こんなトンデモ時空に放り込まれたのだろうとは、さすがにわかっていた。

そう、「あぶない水着2024」。

この、アッチッチサマーがすべての元凶であろう。

8月29日15時を境にループしているということは、この復刻ガチャが脳波に甚大なる影響を与えているせいだ。

何も飛躍した考えではない。

起こっている事態はトンデモないのだが、引き起こした原因は大したことじゃない。

初めから未来人などやってきていなかったし、勝手に記憶のループと称して、8月の記憶に蓋をしてカギをかけたのは自分自身だ。

あたしは思ったよりも単純なんだ。脳の構造は、複雑そうにみえて実のところ、大して中身が詰まってはいない。きっとまた15時を迎えて、次の楽しいことが始まれば、そっちに傾倒するんだ。単純だからな。と楽観できるくらいには能天気なのだ。

そんな単純構造な脳が生み出した幻影が、9月のぺりめになのだとしたら、8月のループしているぺりめにを生み出したのも、ぺりめになのだろう。それはきっと、9月23日に、おそらく一度めの8月の記憶(あぶない水着2024記事)を書いたぺりめにが、あまりのガチャ爆死っぷりだったため、書いたはいいものの、無意識に思い出を閉じ込めてしまい、ループが始まった。と、考えるのが妥当な所だろう。

そうすると、このループを観測し、記憶をループさせ、記事を生産し続けている9月23日時点のぺりめにが諸悪の根源ということになる。

つまりすべての元凶は9月23日のぺりめになので、今すぐにアイツを殴りに行こうか。乗り込んでやる、とブンブン肩を回しているところ恐縮だが、どうやって未来へ行くんだ?

あ、そうか。

元凶がわかったところで、所詮8月のぺりめにには9月のぺりめにを殴って止めに行くことはできない。この記憶のかごの中で、ああでもないこうでもないと脱出するため右往左往している姿を観測されている時点で、この時空を改変する一縷の望みはないというわけだ。

つまり観測者を納得させることができないと、この記憶のループは延々とこのままだということか。なんだそれ、解決方法がわかっても解けないゲームを仕掛けてくるんじゃないよ。そんな糞ゲー勝手に始めるんじゃないよ。ちくしょう観測者め。どうすりゃいいってんだ。ジーザス。あたしは天を仰いだ。

ふー。念のためガチャは引いておくか。単発で5回分だ。1、2、3、4、5うん出ない。おやすみ。

 

気がつけば8月も29日。

ああ、終わる。

あたしのかけがえのない夏が、今年も無情に終わっていく。

ああ……。

15時が近づく。

今回も手立てがなかったと嘆いて、ループに突入するあたしを覗き込んで、せせら笑っているのだろう。観測者め、今に見ていろ。次のぺりめにが、今度こそ何とかしてやるからな!

今のぺりめにには何のアイデアも浮かんでいないが、きっと次のぺりめにが何とかしてくれるさ。←超他力本願

秒針がカウントアップを刻む。このままだと、次のループもダメそうだな。

15時まであと5秒。カチッ、コチッ、57、(はあ……みわくのリボン欲しかったな)、58、(……ん?)、59…………ギュバッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涼宮ハルヒの暴走 (角川文庫)

涼宮ハルヒの暴走 (角川文庫)

 

エンドレスエイトの驚愕: ハルヒ@人間原理を考える

エンドレスエイトの驚愕: ハルヒ@人間原理を考える

 

 

Next→

perig.net

 

TOP

このページで利用している株式会社スクウェア・エニックスを代表とする共同著作者が権利を所有する画像の転載・配布は禁止いたします。
(C) ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.

株式会社アトラスに関わる画像の著作権、その他一切の知的財産権は、全て株式会社アトラスに帰属します。