本が高い!!
単価2000円とか、とんでもない。1800円つってもほぼ2000円ですよ?腰が抜けるわ。
ってことで、あなたにも耳読書という選択肢。
耳読書の雑感含めたAudible使ってみた感想は過去記事にござるます。
オーディブルのプレミアムプランに登録してひと月。体験した雑感としては、オーディオブックは当たり外れがあるということ。よい作品に出会えるかは、そのひと次第ということ。結局、オリジナルポッドキャストばかり聴いてしまうということ。
ただそのなかでも、オーディオブックの当たりはあるもので、わたしにとっての当たりを一作、ご紹介する。
殺し屋の営業術
野宮 有 (著), 外崎 友亮 (ナレーション), Audible Studios (出版社) 形式: Audible版
オーディオブックをひと月聴きつづけて一番ハマって聴き切ったのがこれだ。
あまりの再生時間の長さに、「ながら聴き」を駆使しても大半の本は1週間かかっても聴き切ることはできない。
再生には倍速を使った。この作品は1.3倍でちょうどよかったが、それでも大オチにたどり着くまで6時間ちょっとはかかる。
どうしても「ながら聴き」でオーディオブックの物語を聴き始めると、1章~2章あたりで「聴き続ける」か「いったん積むか」の判断を脳が勝手に行う。ふだんの目読書でもそうだが、1章めを終えて次の2章も読みたいなと思うには相応の「ヒキ」が必要である。
作家目線で言うと、読み始めで読者の心をつかめないと購入してもらえないという法則があるそうだが、読者側の目線でもその通りだなと思う。Audibleにおいても耳はしっかりと物語を顛末を追っているもので、だいたい1章~2章を聴き終えることができるか。それが判断の基準になっている。
選考委員の圧倒的な支持を受け第71回江戸川乱歩賞を受賞したとされる本作は、本として目で読書をする上でも非常に完成された魅力があるのだろう。それだけの作品であれば、第1章に相当な「ヒキ」を仕込んでいても不思議はない。読者を強烈に惹きつける何か魔力のようなものをこの書は持っているのだ。
そうなればもちろん耳で読書したとしても、面白さは据え置きであることがわかる。
この本はわたしも読みたいと思っていた本だ。
だからというわけではないが、聞き入ってしまうバイアスがあったと言及されても否定できない。しかしそれ以上の魅力をこの本の「Audible版」は持っていると言いたい。
通常、音声だけの芝居や朗読は、聴いている側に違和感を感じさせすぎると破綻する。
違和感の原因はいくつかある。言い間違いなどの作劇上のミス、セリフの抑揚などの芝居の強弱、シナリオに張り巡らされた謎やオチにつながる手がかり、これらひとつひとつが耳から脳へ信号として伝わると、脳に「引っ掛かり」を覚える。その引っ掛かりはやがて脳内に記憶される違和感へと変わる。
そうして違和感が溜まっていき、脳のなかで渋滞を引き起こすと、脳の方から指令が飛ぶ。「これ以上、聴くのをストップしてくれ」と。違和感がなだれ込みすぎると、脳内が急激なビジー状態へ突入し、それを一気に処理するように働いてしまい、疲れてしまう。
それらの違和感を最小限に抑えるために、朗読など音で聴かせてくれるボイスアクターさんたちは、適切な箇所で抑揚をつけ、地の文を心地よい声色で読み聞かせてくれるなど努めてくれる。
オーディブルは普通のドラマCDなどとは異なり、一人限りで読む朗読スタイルを主として展開している本が多い。
ドラマCDは男性キャラも女性キャラも一人ずつに担当する声優が異なり、耳で判別しやすいよう作劇上において演じ分けられている。舞台芝居やなんかを耳で聴くといった形式のものだ。
しかし朗読となると、ドラマCD専用に書き起こされた台本と呼ばれるシナリオではなく、朗読のための一人芝居用の台本であったり、小説形式のシナリオから書き起こされた台本などを使う。キャラのセリフだけで構成されているドラマというよりも、少人数で物語の想像を聞いている人に搔き立ててもらうことに終始する。物語として、状況説明をナレーションで入れた方がぐっと入り込めるというのなら、そちらを選択するといった具合。
Audibleのために、朗読用に書き起こされた台本を読んでいる風ではない。どう考えても、「すでに本として出版された内容を、その本を片手に朗読風に声を当てて仕上げている」ものとなっている。だから、ひとりで何役も女性が男性を、男性が女性のセリフを口にすることもある。極端な話だが、セリフ数的に、キャストひとりでやれそうならば、そこもうまく読んでもらう。などといったつくり方をしている。(オーディブル用に書き起こされた作品もあるらしいが)
火と話す男 中山 七里 (著), 榎木 淳弥 (ナレーション), Audible Originals (出版社) 形式: Audible版
読み起こすのもかなりのテキスト量だろう。そもそも本として出版された文字を一字一字、声で表現していかなければならないのだから。そりゃ8時間もの再生時間になる。読んでいるキャストさんもしんどかろうと思う。
そんな中でも最大限に違和感を抑えるように読んでくれているのだから、そもそも1,500円/月で聴き放題してしまっていいものだろうか、とも思う。採算がとれているのだろうか、と心配にもなる。
そんな、きっと、血のにじむような収録に挑んで制作してくださっているオーディオブックだ。大事に聞かねばなるまいとは思うのだが、中にはやはり朗読として適していない本もある。
キャラ数が多かったり、地の文が回りくどい言い回しだったり、少人数では無理が生じる物語もやはりある。目で、文字で追えば違和感がないのだが、耳で聴くと違和感に変わる表現もある。
先にも述べたが違和感があると、聴くのが困難になる。オーディオブックへの「向き」「不向き」は仕方のないことだが、あるのだ。
そんなオーディオブックの性質が何となくわかってくるくらい、聴いてみたわたしが、自信をもっておススメできる一作がこの『殺し屋の営業術』だ。ようやく、たどり着いた。本作の魅力を語ろう。
このオーディオブックは「外崎友亮」さんというナレーターが一人ですべて読み上げる。当然ながら、この方の声が非常にマッチしているのは言うまでもない。巧みな読み上げで、こちらの耳にまったくストレスがないのも魅力だ。
そしてこの本自体の特徴として、以下のことがオーディオブックに向いていると挙げられる。
- まず、出てくるキャラがほぼほぼ男性。→演じ分けに無理がない。
- キャラの年齢は青年~壮年である。→キャストの技量でカバーできる。
- 一人称の語り手的な地の文。→誰がしゃべっているのかわかりやすく示唆してくれる。
- 話術が物語のキーポイントとなっているので、声で聴く迫力も乗っかってくる。
これらがうまく折り重なり、聴く小説としての魅力を最大限引き出してくれている。まさに、オーディオブックのために書き起こされた小説なのか?と言わんばかりだ。
まったくの違和感なく聴き進めることができ、途中、休憩やらは挟むがつるっと聴き終えることができた。休憩の合間にシナリオの展開を忘れ、戻って聴き直すということも一切なかった。※それくらいにインパクトを与えてくれる展開が続くため。
これは、耳だけではなく、目でも楽しみたいと、すべての展開を脳に叩き込んだあとだが、本で買っても読みたくなってしまっている。とんでもない快作だ。こんなに聴き手を虜にする物語、そうそう出会えるものではない。読み放題ではなく1,500円の単品購入をしてもよいくらいだ。
Amazon.co.jp: 殺し屋の営業術 電子書籍: 野宮有: Kindleストア
本との出会いにハードルを下げてくれるAmazon。立ち読みができる本屋も減っている令和。わたしたちに残された最後のサンクチュアリなのかもしれない。もっとたくさんのページ立ち読みさせてくれ。(要望)
わたしの読書事情
いちおう、読書において「わたし」とはどんな人間か少しだけ触れて終わりとしたい。
わたしはかけだし司書でもある。上述のAudibleリスニング時間プラス、普通の目読書もやっているので、何時間「本」に触れているというのだ。というくらいには読書と身近な毎日を送っている。
さらには実益を兼ねたらいいなとシナリオなども執筆しているので、寝落ちる直前までわたしの脳みそは活字であふれていることとなる。
目から耳から摂取し続けるそのさまは、もはや活字中毒者といっても言い過ぎではなかろう。
まあよいだろう。通れ。
最後に
Audibleがこんなに耳になじむとは思わなかった。
ドラマCDとは違う、小説本をそのまま音声化することの何が面白いのだ。聞いていて馴染むわけがない。と勝手な解釈で食わず嫌いをしていた自分の器量の狭さを恥じる。
わたしは6月から聴き始め、30日間の無料期間中であるが、正直、オーディオブックの本といい出会いがなくとも、ポッドキャストだけでもじゅうぶんに元が取れるくらいの充実のコンテンツ量だと感じている。
そうして同じようにオーディオブックというものにハマれる同好の士が増えればうれしいなと思っている。
Audibleプレミアムプラン無料体験は30日分。ひと月の間でもじゅうぶんに試してみることができるので、迷っているひと、失敗したくない人はこれを機に試してみてもいいかも。




